四則演算・単位系の判別・論理的思考こそが科学データを読み解く「三種の神器」:『「中卒」でもわかる科学入門』(小飼弾)より

著者紹介

小飼弾(1969年 -)さんは投資家、プログラマー、ブロガーです。オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)の元取締役としても有名。書評を中心としたブログ「404 Blog Not Found」は月間100万PVに達しています。

専門家と話すための「三種の神器」

たんなる科学の知識を全般的に与えてくれる本ではありません。「科学について学者や評論家のいうことを鵜呑みにするのではなく自分で確かめてみましょう」という提言です。その技術と有効性を理解させてくれます。

専門家と同じ立場と方法で、データや結果を再検証することは素人にはむずかしいでしょう。でも、データや統計の数値は、小学校で習うたんじゅんな四則演算だけで、だれにでも確かめられることが多いようです。

《四則演算ができ、単位系が揃っているか判別でき、そして論理的思考ができる。これが専門家と話ができるようになるための「三種の神器」です。》(p.80)

もちろん本当に専門家と直接会って話をする必要はありません。要は、「1.専門家の提示する数字がどれだけ信用に足るものなのかを自分で調べ」、「2.専門家の話している数値の単位が妥当なものかを判断し」、「3.その結論に至るまでの論理に飛躍や破綻がないかを見抜く」ということです。

四則演算ができる

《たとえば、私たちの体からどれくらいの放射能が出ているか。》(p.68)について、じっさいに小学校の四則演算で計算しています。

体内にはカリウムという元素があります。そのうち0.0117%は放射性同位体のカリウム40であり、カリウム1g当たりの放射能強度は30.4Bqです。人体の構成比ではカリウムは0.2%なので、たとえば体重80㎏の人なら

80kg × 0.2% = 160g

です。体内にカリウムが160gあるということになりますね。次に、カリウム1g当たりの放射能強度は30.4Bqだから、割り算しましょう。

30.4Bq × 160g ≒ 4800Bq

ところで東大病院放射線治療チームは体内カリウムを200gと見積もっているので

30.4Bq × 200g ≒ 6000Bq

という結果がわかります。

《ちなみに、以前私は自分の放射能を原子力PRセンター「とまりん館」で実際に計測してもらったことがありますが、この時の放射能は9800Bqでした。人体の放射能の過半がカリウム40由来ということになります。
「~~から××ベクレルの放射能が検出された」というニュースがよく流れますが、私たち自身が数千から1万程度の放射能を持っているのです。》(p.69)

このことを知っていれば、日々のニュースに出てくる数値が信頼できるかどうかをすぐに判断できます。人体にある放射能の基準値を「数千から1万程度」と理解しておけば、それ以下かそれ以上かで危険性を身近に感じることができるからです。

「大切なのは、この結果を知ることではなく、この計算のやり方を知っているということだ」と小飼さんはいいます。

上の数値と計算方法は、ネットでも中学理科の教科書からでも見つけることができるものです。

わたしのような素人は「探すこと」と「数値を当てはめて計算する」ことだけでいいのです。それだけで、そのニュースが正しいかどうかをある程度は判定できるでしょう。

結論だけを集めて、調べもせず、検証もせずに、「政府もマスコミも本当のことを言ってくれない。いったい私たちは何を信じたらいいのか」と嘆いていても仕方がありません。そういう態度は、いわば「信仰」にすぎないからです。

いまやネット時代なのだから「わからないなら自分で調べる、検証する」と頭を切り替えるべきなのです。「四則演算が理解できていれば科学はわかる」と小飼さんがいうのは、こういう意味でしょう。

単位系を合わせる

数字の大きさに圧倒されるのではなく、その単位がどれくらいの意味を持っているのか、体感しようということです。

《例えば、電力を表すW(ワット)と、電力量を表すWh(ワット時)はまったく別の単位です。
電気を水にたとえるなら、Wは土管の太さで、Whは実際にそこを流れた水の量ということになります。
高出力レーザーの話だと、EW(エクサワット=100京W)など、聞いたこともないような単位が使われることがあります。ものすごい出力ですが、しかしそれも1fs(フェムト秒)=1000兆分の1秒なら、実際のエネルギー量はたったの1kW/h。電気代に換算したら数十円といったところです。》(p.62-63)

土管の太さがいくら太くても、ちょろちょろとしか水が流れなければ、たいしたことがないのは当たりまえですね。

このように無味乾燥に見える数字も、日常生活にある身近なものに喩えたりして、イメージしやすい形に変換するとわかりやすいですね。

論理的に考える

《専門家による議論を追うために細かな知識はいりませんが、基本的な論理は必要です。これにしても、必要なのは単純な三段論法や背理法だったりします。》(p.75)

まず単純な三段論法については、昔からある「風か吹けば桶屋が儲かる」式の屁理屈に惑わされないように、と述べています。

前後のつながりは妥当なのか、いちいちツッコミをいれてみるのがいいでしょう。科学的検証がしっかりとした研究結果であれば、素人なツッコミにも丁寧に答えてくれるはずです。

次に、背理法。これは「ある事柄」を証明するために、まず「それが間違っている」ことを仮定する。次に「その仮定が成り立たない」という結論を導くことにより、「ある事柄が成り立たないことは間違いだ=ある事柄は正しい」と証明するものです。数学の証明では、おなじみですね。

それらしい科学的議論があった場合には、ひとまず落ち着いてみる。そして、その議論の前提が妥当であるかや、論証の仕方が「へんだな」と思わないかを、ひとつひとつゆっくりと辿ってみればいいのです。

科学リテラシーを身につけるために

本書には、こういった「三種の神器」の使い方と例がたくさん書いてあります。科学リテラシーを身につけることの大切さがよくわかりました。 良書。

関連記事

“日本のインターネットの父”である村井純教授による慶応SFC授業「インターネット2013」が iTunes U で無料公開されている

慶応大学SFCの授業「インターネット 2013」(配信者:村井純、小川晃通、斉藤賢爾)がiTunes Uで配信されています。インターネットに興味のある方は必見です。 村井純教授 村井純教授といえば、少しでもインターネットのことを知っている人…

肩にかけてもズリ落ちにくい!エツミ「ネオプレーンストラップ35」は伸縮性のある軽くて柔らかい素材

ミラーレス一眼カメラを購入したら、ストラップはだいたいセットで付いていますが、付属のものはちょっと短かったり、デザインが好みのものでなかったりします。近くのJoshin やヨドバシカメラ、ビックカメラなどに行けばいろんなデザインと機能のある…